これを愛というのなら
待っていてくれた梓を、医者から説明を受けた内容を告げる。


「蓮は……お店を継ぎたいんでしょ?」


内容を伝えただけで、俺の思いを訊いてくれた梓の手を握る。


「あぁ…継ぐよ。でも、今すぐには無理だろ…親父が退院したとしても…店には立たせられない…」


「そうだね……私のお父さんもね、同じ病気してるの。だから、わかってるつもり…」


梓を見ると、瞳に涙を浮かべて。

蓮は、蓮の決断をして、と。


「蓮が決断したことなら……支えたい」


見上げて言ってくれた梓の涙を指で掬って。

ありがとな。




病院のカフェでーーー。


俺が店を継ぐ。

おふくろと姉貴に告げると、わかった、と言ってくれて。

俺が戻るまで姉貴が、親父とおふくろの面倒を見てくれると言ってくれた。

家に居たら、絶対に店に立つと言い出すから、姉貴の家に居る方が賢明だ。


おふくろは、梓に。

本当にいいの?と気遣ってくれて。

蓮が決めたことなら、と。

一緒に継がせて下さい、と迷いなく言ってくれた。


ありがとう、お願いします、とおふくろが答えると。

梓の瞳には、涙が浮かんでいて。

その涙をいつものように拭うと。

あんたはいい子を捕まえたわね、と笑った姉貴。



入り用になる物を買いに梓と、病院を出た車の中で。


「本当に、梓はいいんだな?」


改めて、ちゃんと梓の意志を聴きたかった。


「うん!年内に、私も鈴木を育てて蓮に着いてく」


梓ならまだ続けたいと言うと思ってた。

やっとオープンしたばかりで、責任感が強い梓なら。

だけど、予想に反した梓の答えはただ、ただ嬉しかった。


「ありがとう、梓」


親父が退院したら、きちんとプロポーズだな。
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