これを愛というのなら
『おはようございます。休みの日にすいません。今から予定ないなら、俺とデートしてくれませんか?』


やっぱり、そうきたか……

両足を立てて座っている、蓮の顔を伺うと。

腰に触れたていた手が脇腹を擽る、、、

電話越しに見せつけるように。

思わず、あっ…と声が出てしまう。

わざとだ、絶対に。


『…チーフ?どうしたんですか?』


「…っ…今日は…料理長と居るから…無理なんだ…ごめんね…」


『今、隣に居るんですか?』


谷口くんが、そう訊いてきた直後。

スマホは蓮に奪われて。


「隣に居るけど。今、いい雰囲気だったんだけどな…」


挑発するような嘘を、谷口くんに、わざと低い声色で言っているし。

瞳は、楽しそうだし。

遊んでやるかって思ってるんだろう、余裕っぷり。


『…っ…邪魔してすいません。だけど、今日一日だけチーフとの時間をくれませんか?』


蓮は、どうするかな、と。

また、わざと脇腹を擽ってきて、あっ…と声が出てしまう。


絶対に聴こえてる。

本当に、いい雰囲気の途中みたいだよ……


蓮を睨むと、口角を上げてニヤリと笑う。


「そうだな……とりあえず梓を抱かせてくれよ?』


『えっ……あの……本当に俺……邪魔したんですか?』


「あぁ、邪魔してくれたな。電話に出てやれって言ったのは俺だけど。そろそろ俺、限界なんだよな。終わったら連絡するよ」


『あの……それは……ちょっと……』


「ちょっと…ってなんだよ?そうかっ!電話切ったら…想像しちまうよな?だったら、このまま電話を切らずに…俺たちがしてるの聴いとくか?」


また、蓮が脇腹を擽るから。

ちょっ……と…っと声が出てしまう。

そして、わざとチュッと音を立てて、頬にキスをしてくる。


『…っ…俺は…そんな趣味ないんで…遠慮しときます…ってことで今日は諦めます』


「そうか…それより谷口くんに1回、会いたいな」


『俺も、実物に会ってみたいですけど…』


「なら、明日行くよ。マリッジに」


『わかりました。では、明日』


蓮は、谷口くんが電話を切ってから。

スマホをテーブルに置いて。

楽しかった、と笑い出すから、私は楽しくなかった、と。


「本当に、挑発するためだけに昨日みたいにされたらって…はらはらしたんだけど…」


「するわけねぇだろ。されたいんなら今から、するけど?」


今は勘弁してください、と答えると。


梓の艶っぽい声を聴くのは、これから先もずっと俺だけだ。

誰にも聴かせたくないし、聴かせない。


甘い声色が、耳元を掠めて。

蓮の指が、私の髪を弄ぶ。


本当に蓮には、完敗だ。

これも、わざと甘い声色で耳元で言ってる。

悔しいくらい計算されてて、翻弄される。


明日がどうなるのか……ちょっと不安なんだけど。

そんな私の不安を他所に、蓮は楽しそうだよ……


その日の夜も、散々……身体を弄ばれた。



気持ちいいんだよな、梓の身体。

お互いの体温が馴染んだ瞬間なんて堪らねぇ。


そんな言葉を、囁いてから。
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