これを愛というのなら
さてっ!蓮の用事は?
私が蓮に振ると、そうだったな、と。
シェフパンツのポケットから、折り畳まれた紙を取り出して。
「これ、内容が変更になった新しいリュミエールの披露宴のメニューなんだが、どう思う?」
「前のと何が変わったの?」
変更前のメニュー表を広げて訊くと、ここ、と。
魚料理と肉料理のソースを指差してくれる。
「なんで変更したの?前のも美味しかったのに…」
「季節感がなかった。秋~冬に向けてってなると、変更前のだと色合いも味も爽やか過ぎる」
「なるほどね。たしかに、さっぱりした感じだったよね。変更したのは、温かみと深みがある感じにしたの?」
「そうだな。今日、持って帰るから食べてみるか?」
「うん!食べてみたい。ところで、魚も変更した?」
魚も変わってる事に気付いて、訊いてみると。
季節に合わせて変えた、と。
「だけど、新鮮なのは時期的にまだ手に入らない。試作品は市場の冷凍なんだよ。繁忙期くらいには新鮮なのが手に入る」
「じゃあ、大丈夫だね。ならね、前菜とスープも変えた方がいいんじゃない?」
だって、前菜はイベリコ豚の生ハム~メロン添え~。
メロンは秋~冬の食材じゃない。
私の記憶が確かなら、トマトもあったはず。
スープは、和牛とフルーツトマトのポトフで。
トマトも秋~冬がメインじゃないでしょ?
ポトフの和牛は、そのままでトマトだけでも違うのに出来ないかな?って思うんだけど。
「そうだな。たしかに、そう言われると季節的には秋~冬に旬な野菜を使った方がいいな。もう一度、考えてみるよ」
この真面目な仕事の会話を聞いていた、谷口くんは。
「あの…疑問が2つあるんですけど聞いてもいいですか?」
いいよ、と答えると。
まず1つが、二人は同棲してるんですか?
「そうだけど。約1年前から。それで、もうひとつは?」
「さっきまで、イチャイチャしてたのに切り替え早いなって。二人共、仕事の顔に切り替わってたんで。スイッチは何処にあるんですか?」
スイッチって言われてもね。
蓮を見ると、蓮も困った顔をしていて。
「……そうだな……リュミエールで二人で働いてた時は、会社に入った瞬間。繁忙期は、会社で2人の時間が合っても自分への連絡事項が、インカムに入って来た時。今なら…メニュー表を広げた瞬間だな」
蓮が答えてくれると、
要は二人とも仕事人間って事ですね!
「俺も、二人みたいになりたいな。仕事とプライベートを切り替えられるくらい、仕事を好きになりたい」
なれるんじゃない、その気持ちがあれば。
私なりの言葉を伝える。
私もそうだったから。
最初は、切り替えられなかったけれど……
仕事が楽しくなるにつれて、切り替えられるようになった。
「ありがとうございます。頑張ります!それより、仕事場も一緒で同棲って飽きないんですか?」
「飽きないんだよ、俺らは。お互いに相当、好きらしい。家だと、何かしてる時以外はくっついてる」
完全に勝ち目ゼロで入る隙間ないじゃないですか、と。
項垂れる、谷口くん。
「鈴木を口説いてみたら、どうだ?」
鈴木が、接客中で居ないのを良いことに、蓮がとんでもない事を言っちゃってる。
えっ…!と、黙ったままの谷口くんに、
「小柄で可愛いし、さっぱりしてるし。俺は、梓より先に鈴木に会ってたら惚れたかもしれねぇな」
お薦めポイントを提示している。
完全に、からかってるよね。
だけど、真面目な谷口くんは。
考えておきます、と。
もしも、本当に谷口くんが鈴木を口説き始めたとして、
鈴木も意外と真面目だし、そう簡単に落ちるかな。
それに、私がいなくなれば。
私の代わりを社長が呼ばずに、鈴木をチーフにするなら、
上司と部下になるんだけど。
そんな、私の心配を他所に。
二人が付き合うようになるなんて、っていう話は、
また別の機会に。
私が蓮に振ると、そうだったな、と。
シェフパンツのポケットから、折り畳まれた紙を取り出して。
「これ、内容が変更になった新しいリュミエールの披露宴のメニューなんだが、どう思う?」
「前のと何が変わったの?」
変更前のメニュー表を広げて訊くと、ここ、と。
魚料理と肉料理のソースを指差してくれる。
「なんで変更したの?前のも美味しかったのに…」
「季節感がなかった。秋~冬に向けてってなると、変更前のだと色合いも味も爽やか過ぎる」
「なるほどね。たしかに、さっぱりした感じだったよね。変更したのは、温かみと深みがある感じにしたの?」
「そうだな。今日、持って帰るから食べてみるか?」
「うん!食べてみたい。ところで、魚も変更した?」
魚も変わってる事に気付いて、訊いてみると。
季節に合わせて変えた、と。
「だけど、新鮮なのは時期的にまだ手に入らない。試作品は市場の冷凍なんだよ。繁忙期くらいには新鮮なのが手に入る」
「じゃあ、大丈夫だね。ならね、前菜とスープも変えた方がいいんじゃない?」
だって、前菜はイベリコ豚の生ハム~メロン添え~。
メロンは秋~冬の食材じゃない。
私の記憶が確かなら、トマトもあったはず。
スープは、和牛とフルーツトマトのポトフで。
トマトも秋~冬がメインじゃないでしょ?
ポトフの和牛は、そのままでトマトだけでも違うのに出来ないかな?って思うんだけど。
「そうだな。たしかに、そう言われると季節的には秋~冬に旬な野菜を使った方がいいな。もう一度、考えてみるよ」
この真面目な仕事の会話を聞いていた、谷口くんは。
「あの…疑問が2つあるんですけど聞いてもいいですか?」
いいよ、と答えると。
まず1つが、二人は同棲してるんですか?
「そうだけど。約1年前から。それで、もうひとつは?」
「さっきまで、イチャイチャしてたのに切り替え早いなって。二人共、仕事の顔に切り替わってたんで。スイッチは何処にあるんですか?」
スイッチって言われてもね。
蓮を見ると、蓮も困った顔をしていて。
「……そうだな……リュミエールで二人で働いてた時は、会社に入った瞬間。繁忙期は、会社で2人の時間が合っても自分への連絡事項が、インカムに入って来た時。今なら…メニュー表を広げた瞬間だな」
蓮が答えてくれると、
要は二人とも仕事人間って事ですね!
「俺も、二人みたいになりたいな。仕事とプライベートを切り替えられるくらい、仕事を好きになりたい」
なれるんじゃない、その気持ちがあれば。
私なりの言葉を伝える。
私もそうだったから。
最初は、切り替えられなかったけれど……
仕事が楽しくなるにつれて、切り替えられるようになった。
「ありがとうございます。頑張ります!それより、仕事場も一緒で同棲って飽きないんですか?」
「飽きないんだよ、俺らは。お互いに相当、好きらしい。家だと、何かしてる時以外はくっついてる」
完全に勝ち目ゼロで入る隙間ないじゃないですか、と。
項垂れる、谷口くん。
「鈴木を口説いてみたら、どうだ?」
鈴木が、接客中で居ないのを良いことに、蓮がとんでもない事を言っちゃってる。
えっ…!と、黙ったままの谷口くんに、
「小柄で可愛いし、さっぱりしてるし。俺は、梓より先に鈴木に会ってたら惚れたかもしれねぇな」
お薦めポイントを提示している。
完全に、からかってるよね。
だけど、真面目な谷口くんは。
考えておきます、と。
もしも、本当に谷口くんが鈴木を口説き始めたとして、
鈴木も意外と真面目だし、そう簡単に落ちるかな。
それに、私がいなくなれば。
私の代わりを社長が呼ばずに、鈴木をチーフにするなら、
上司と部下になるんだけど。
そんな、私の心配を他所に。
二人が付き合うようになるなんて、っていう話は、
また別の機会に。