これを愛というのなら
「はぁ!?あいつ、大丈夫なのか?」


松田くんと話したことを話すと、蓮は眉を寄せた。

たしかに、今時なんだろうけどネットで知り合った相手ってなると、誰だって第三者は心配するよね。

だけど、等の本人は何を言っても聞く耳を持たないパターンが多い。



「大丈夫かはわからないけど、見守ってあげようよ」


「……そうだな……それで、デートは明日なのか?」


「うん、そうみたい。それで、私が選んで持って来てって。朝の配達の時に借りて帰るって言ってた」



次の日ーーー。


松田くんは、配達に来て。

カウンター席でコーヒーを飲んでいる。



「七分袖のシャツとそれに合うTシャツ入ってるから、ズボンは自分で合わせてね。蓮のは丈が長いと思うから」


「おぉ!ありがとう。蓮は足長いし俺より高いからな…」


紙袋から、服を出して。

これならベージュのチノパンでいいかな?


「うん、いいと思う!」


満足気に微笑んで、頭をポンポンする。


蓮は私の頭に今日も触れた松田くんを見て、舌打ちした後に。

今日、会う女は本当に大丈夫なのか?


幼なじみだからこそ、ずっと心配してるんだと思う。


「大丈夫だよ。めちゃくちゃいい子なんだよ!」


「そうか……結婚詐欺とか、犯罪の類いに引っ掛かかるなよ」


「ないない!あんなに、いい子が結婚詐欺師だったら人間不信になるよ」


笑いながら否定して、いつもの調子の受け答えをした松田くんは、マグカップに口をつける。

配達されたばかりの野菜を切りながら、松田くんを見る蓮の瞳から、心配の色がと伝わってくる。


明らかに恋をしてるだろう松田くんは気付いてないにしろ、第三者の私にはそう見える。


まさに、昨日思っていた通りだ。

聞く耳を持っていない。


松田くんが、いつものように手をヒラヒラ振って出て行ったあと、蓮は盛大な溜め息を吐いた。



「心配だね……でも今はきっと何を言っても聞く耳を持てないと思う」


「……わかってる……本当に……何もなければいいけどな……」


「蓮……?」


作業の手を止めて、ん?と言った蓮の腰に横から腕を回して抱き締める。

どうした?

柔らかい声にちょっと安心する。


「蓮が…すごく心配そうだから…」


「…ちょっとな…嫌な予感がしてな…」


包丁をまな板に置いて、身体を私に向けるから、腰に回した私の腕から衣擦れの音がして自然と解かれて、蓮は私を掻き抱いた。


嫌な自分の予感を打ち消すように、力強く。

だから、蓮の胸に顔が当たっている私は息苦しくて。

腰に回し直した手で背中を叩くと……


わりぃ、と腕の力を緩めてくれたかと思うと、、、

見上げた私の唇に自分の唇を重ねた。


音を立てて、離れる唇。


「……これ以上したら止まらなくなる……」


もっと、蓮のキスが欲しくなる。

だけど……今は、これくらいじゃないと私も止まらなくなる。

頭を撫でて髪にキスをして、柔く優しく微笑んで。


「不思議だよな……梓の体温を感じるだけで…嫌な予感も不安もなくなる…」


それは、私も同じだよ。

蓮と恋人同士になる前からずっとーー今も。


「それは、お互いに愛し合ってるからだよ!機嫌直すために、リュミエールでもよく手を握ってきたよね?」


「そうだな。それが今も変わらないってことだ」


うん、と頷けば、蓮の優しい笑顔があって。

結婚しても変わる事のない愛を感じる。

蓮の全てから。

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