これを愛というのなら
蓮の誕生日は、今度休もう、と言っていた初日で。

買い物、と蓮に伝えて酒屋さんに行って、ドイツビールを受け取って、

そのついでに、時計屋さんで蓮の好きなフランスのブランドの時計を見つけて、買うことにした。


「蓮の誕生日プレゼントか?」


時計屋さんのおじさんは、はい、と答えると、おばさんを呼んでラッピングしてくれて。


「蓮は、うちの息子と一緒だから39になるのかぁ……ワシも歳を取るはずだな」


「まだまだ、若いですよ!」


「そうよ!あんた!まだまだ若くいて貰わないとね」


「そうです、おばさんの言うとおりです!」


おしっ!まだまだ若くだ!

豪快に、おじさんは笑う。


本当に、この商店街の人達みんなが良くしてくれる。

息子さんや娘さんは、蓮の幼なじみが大半で、蓮の事も小さい時から知っていて。

ときどき、やんちゃ話も聞けたり。

今どき珍しい、小さいながらも色んな店があって活気ある商店街に、ほのぼのする。

それもこれも、蓮の奥さんになれたから。

今の私は、何もかもが幸せだ。


「おじさん、おばさん。ありがとうございます!」


蓮は元気で明るくて、いい子をもらったな!

そうね、蓮くんも幸せね。


そんな、おじさんとおばさんの会話を、自転車で家路を急ぐ、私には聞こえていなかった。
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