これを愛というのなら
ただいま。


蓮はテラスのベンチに座って、アイスコーヒーを飲みながら、最近替えた電子タバコを吸っていて。

前々からアイコスに替えたらって言っていたのに、頑なに充電が面倒だ、とかいう理由で替えなかったくせに。

私が痺れを切らして買って来ると……すんなりとアイコスに替えてくれた。


わざわざテラスに出なくてもいいし…
消さなくていいから楽だな、と。



窓を開けると、おかえり。

何を買いに行ってたんだ?


「これだよ!おめでとう。今日は誕生日でしょ?」


「…そうだったな。ありがと」


開けていい?と訊いて、開けた物を見て。

ずっと俺が時計屋で狙ってたの知ってたのか?


えっ…?そうだったの?

だから、知らずにいいなと思って。


「すっげぇ嬉しい!ありがとな。大切に使うよ」


「よかった。以心伝心したのかも」


隣に座った私の顔を覗き込んだと思ったら、そうかもな、と微笑んで、優しいキスをくれる。



「ドイツビールも買ってきたよ」


「まじ!?夜、一緒に飲もうぜ」


「うんっ!」


同棲してからは、誕生日なんだからと遠慮していた私に蓮は、

誕生日プレゼントだろうと一緒に飲むから旨いんだよ、と言ってくれて。

今年は素直に頷くことにした。




蓮の太腿の上に座って抱き合い、戯れるようなキスをして、額を合わせて、瞳が重なって、一緒に微笑んでを繰り返す。


甘い甘い蓮の誕生日の昼下がりーーー。


水を指したのは、ずっと鳴り続けるインターホンの音。


「さっきからインターホン鳴ってない?」


「鳴ってるな……ほっとけ」


蓮はまた唇を重ねて、私のロングスカートからTシャツとキャミソールを引っ張り出して、背中を撫でて。

下着のホックに手が触れた時、、、


今度は、テラスのテーブルに置いてある蓮のスマホが鳴る。


留守電に切り替わっても、また鳴るスマホ。

蓮は舌打ちをして、画面に視線を移すと。


「…っ…あいつ…邪魔しやがって…」


松田くんだ。

たぶん、いや絶対にインターホンを鳴らしていたのも。


「……なんだよ?」


『なんだよ、じゃねぇよ。お前、家に居るんだろ?インターホン鳴らしたんだけど…』


太腿から降りようとするけれど、腰に蓮の片腕が巻き付いていて、降りる事を許してくれず、仕方なく座ったままになる。


「はいはい、悪かったよ。とりあえず鍵開けるよ」


蓮の太腿から降りると、蓮は私の頭にポンっと手を置いてから中に入ると、後ろから入った私にスマホを渡して玄関に向かう。

ローテーブルに蓮のスマホを置いて、キッチンに立って、スカートにTシャツとキャミソールを入れて整えて。



「今日は休みだろ?上がって行けよ」


「遠慮なく、お邪魔します!」


玄関でのやり取りに耳を澄ます。



リビングのソファーに座ると、

洗濯したからありがとう、とこの前貸した服を私に渡してくれる。


「わざわざ、ありがとうね」


テラスに起きっぱなしのアイスコーヒーのグラスと、蓮の煙草、私があげた時計を箱ごと、取りに行っている間に。


「何回鳴らしても出て来ねぇで、何してたんだよ?」


松田くんが蓮に訊いている声が耳に届いて、ほんのり熱くなる顔を伏せながら、中に入ると。


「わざわざ聞かなくてもわかるだろ?」


「わかんねぇわ!」


「…っ…いいとこだったんだよ!」


「……昼間からか?」


「昼間とか関係なく、そういう雰囲気になる時あるんだよ」


蓮とのテラスでのキスを鮮明に、思い出させて。

熱くなる顔で、蓮と松田くんのアイスコーヒーをグラスに注ぐ。


蓮も、蓮だ

寝てたとか、言ってくれたらいいのに……

他には浮かばないけど何だって言えるよね
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