これを愛というのなら
ランチの時間が終わる頃に店に行くとーーー。


「あんた、その顔どうしたの!?」


「何があったんだ?」


「病院には行ったの?」


家族の心配の声が次々に飛んでくる。


昨日の事を説明した蓮は、そういうことだから。


「これくらいの怪我は大したことない。病院に行くほどじゃない。 傷が治るまでは店を頼んだ!何かあったら連絡して」


「店は任せろ!それで、商店街はもう大丈夫なのか?」


「あぁ、もう大丈夫だろうな。近々、“KOBAYASHI”の一件がニュースになったら商店街の皆を集めて、大輔が説明してくれる」


そうか!

後始末の小野くんの役目のひとつは、これだったんだね。

小野くんにしか出来ない、小野くんだから出来ること。


「どういうことだ?」


いきなり、ニュースになるって言われても逮捕されたなんて、知らなければ……どういうことってなるよね。

お義母さんとお姉さんだって、キョトンとしてる。


「奈々枝ちゃんのお父さんが警視庁の偉いさんで、大輔が昨日…呼んでくれてたんだ。俺たちの前で連行された」


「それを早く言いなさいよ!蓮はね、頭は回るくせに、たまに肝心な話が抜けるのよ!話には順序があるでしょ?」


「わかった、わかった!」


面倒くさそうに舌打ちした蓮に、本当にわかってるの?!

わかったって言ってるだろ!

もっと可愛く、わかったよとか気をつけるとか言えないの?!


お姉さんと蓮の久しぶりの口喧嘩に、お義母さんと瞳を合わせて、笑ってしまう。

お義父さんは、やれやれと言った感じで溜め息を吐いて、


「おい!それくらいにしとけ!」


さすがお義父さん。

大きな溜め息を吐いたお姉さん、舌打ちした蓮は同時にそっぽを向いて、一喝で静めてしまう。


「商店街が残るなら、それでいい」


「そうよ。蓮たちが守ってくれたのよ。少しずつ、こうやって次の世代に引き継がれていくのね」


梓ちゃんお願いね、と。

お義母さんは私の背中に手を添えて、蓮のことも店も。

はいっ!と力強く頷くと。


「俺、いい嫁をもらっただろ?」


「皆が言ってるぞ。元気で明るい、いい娘を蓮は嫁にもらったなって」


そうなんですか?

きっと、私の顔は真っ赤だ。

嬉しいと照れくさいが交じって。


「そうよ。梓ちゃんは、どこに出しても恥ずかしくない自慢のお嫁さんよ!」


もう叫びたいくらいの入り交じった気持ちに、どう表現したらいいかわからなくて……

蓮に視線を送ると、よかったな、と頭を撫でてくれた。


蓮はお義父さんとディナーまでの時間の仕込みを始めたから、私は買い物に行くことにした。

大好きで大切な商店街へ。
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