これを愛というのなら
何気ない、いつもの日常に戻った1年後の定休日。


仕込みがあると、店に行く蓮を見送った後ーー。

私は一人、あるものを握り締めて悩んでいた。


どう伝えよう………

どうやって話そう……


誰かに相談してみるって思ったけれど……誰よりも先に蓮に伝えたい!


悩みながら、落ち着かず掃除を始めて。

気が付くとお昼少し前で、私も店に行こうとコートを手にした時ーーー。


ただいま、の声と同時に玄関が開いて。

ソファーにコートを放り投げて、靴を脱いだばかりの蓮に抱き付いていた。


おかえり、と。


「おいっ!どうしたんだよ?何かあった?」


両腕でしっかりと抱き止めてくれた蓮に、抱っこ、と見上げると。

仕方ねぇな、と言いながら両腕で抱え上げてくれる。


ソファーに私を抱っこしたまま座った蓮は、


「で、急に抱き付くは抱っこって言うは……ちゃんと話せ?」


帰って来たのがわかった瞬間に、どう話すもどう伝えるも、どうでも良くなっていた。

ただ、抱き付きたくて大好きな腕の中で伝えたい、そう思った。


あのね………と、蓮がお腹に添えていた手に、手を重ねて………


ここに、蓮との子供がいるみたい。


まどろっこしい言い方なんていらない。


「……本当か?」


本当だよ、とテーブルの上にある検査薬に視線を移すと、蓮もそこに視線を移して、隣にあった箱を交互に何度も見て。


「……すっげぇ嬉しい!嬉しすぎて……わけわかんねぇ!」


肩を抱いて、自分の方へ引き寄せてお腹を擦ってくれる。


「そんなに嬉しい?」


「当たり前だろ!あの日から、どれだけ待ち望んだと思ってんだ!」


「そうだね。毎月、私がお腹痛いって言う度に……落ち込んでたもんね」


「気付いてたのか……普通にしてたつもりなんだけどな」


「私を悩まさないためにって普通にしようとしてくれてるって、わかってたから気付いてない振りしてた」


「……梓のそういう所には敵わない」



なかなか出来ない事に悩んで、病院に行く事も考えたけれど、


『病院に行って出来なくて梓が、悩んで負担かかるくらいなら、自然に任せよう』


蓮が言ってくれた事で救われて、やっと授かったことが本当に、嬉しくて嬉しくて堪らない。



夕方、病院行こう?


ーーー。


病院の帰りに店の横の実家に寄って、3人に報告する。


「3人共、心して聴いてくれよ。お腹の子は……三つ子なんだよ」


「えっ……?!三つ子?」


妊娠報告直後の、三つ子と聴かされて驚きの声を上げたのはお姉さんだった。


お義父さんとお義母さんは、目を丸くしていて………


「みんなでサポートしてあげるから大丈夫よ」


「そうだな。一度に孫が3人か。楽しみだ」


蓮の、俺も驚いたよ、の言葉に。

お義父さんもお義母さんも笑顔になってくれて。


次の定休日に、私の実家にも行って報告すると、、、

私の両親も驚きながらも喜んでくれた。

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