これを愛というのなら
夜ご飯の食材を買い、また蓮の家に帰った頃にはーーー
空は茜色に染まっていてベランダの窓から暖かみのある光が、射し込んでいた。
キッチンに立つ蓮の姿が、その光に反射して妙に様になっている。
カウンターのスツールに座って、かっこいいな、と見つめていると。
「なんだよ?」
蓮と目が合った拍子に訊かれて、目線を下に逸らしていた。
すると、フッと笑う声がして。
「見とれてた?」
図星をつかれて、素直に頷くことは出来ずに下を向いたまま、別に、と返していた。
「まあ、いいや。もう少しで出来るから待ってろ?」
キッチン越しから伸びてきた手が頭をクシャリと撫でてくれて、頷くと、
可愛いな、と呟いた蓮がどんな顔をして言ったのか見たくなって、顔を上げたけれど目線は眼下のフライパンに向けられていて、見れなかった。
蓮が作ってくれた明太子パスタ。
私の大好物で、美味しいと評判の店のこのパスタよりも、蓮のこのパスタが一番美味しいと思う。
サーモンのカルパッチョも、市販のドレッシングではなくて蓮が作ったもので、絶品。
素直に美味しさを口にすれば、調子に乗るから言わないけど、顔の綻びは隠せない。
一緒に洗い物をしていると、
「旨かった?」
蓮の猫なで声が左耳に届いた。
「美味しかったよ」
言わないでいるときっと、何がたりない?とか悩み始めるから、仕方なく答えると、
満面の笑みを横目に浮かべたのがわかった。
当たり前だ、と言いながらも。