これを愛というのなら
chapter;6
お風呂から上がって、スマホを見ると。

数分前に、蓮からの着信があった事を知らせてくれていた。

思わず、笑みが溢れた。





『ごめん、お風呂入ってて』


すぐに出てくれた蓮は、


『そうか、今日は悪かった…』


そう謝るから、なにが?って聞き返すと、


また怒鳴ってる現場を聞かせちまったし、と。


申し訳なさそうな声が耳に届いた。


『あぁ、その事なら謝らなくても。あんな現場なんて聞き馴れたし、見馴れたよ』


そう、答えると。


『馴れたってな…まぁ、繁忙期になったら日常茶飯事か…』


情けない声になって、忙しい時にミスされると…ついな、と。


わかるけどね。


同意した私に、蓮は、


『だろ?あぁ!それと…』


そう続けて、


『坂口のこと、ありがとな』


って言うから、えっ?と聞き返す。


私、なんか言ったかな?


『フォローしてくれたんだろ?坂口に』


ちゃんと見てくれてるって、言ったことね。

ひとりで頷いて、テーブルの缶チューハイに手を伸ばした。


『梓が言ってくれたことを聞いて、俺に認めてもらえるように頑張ろうって思ったらしい』


『そっか、坂口くんがね。あれ以上怒鳴られずに済みましたって、お礼を言ってきてくれたから、思ってること言っただけだよ』


『そうだったんだな、何を梓が坂口に言ったかは聞かなかったけど』


何を言ったんだよ?


蓮って、気にするタイプだったんだ。


以外で、知らなかった新たな一面かも。


『教えない!』


意地悪っぽく言うと、なんでだよ!って。

拗ねたみたいな声で、言うから笑ってしまう。


『なんで今、笑った?でも、まぁ…梓のことだから、俺の良い所を言ってくれたんだって思っとくよ』


『うん!そう思っておいて』


ちょっと嬉しかった。

私の言葉なんかで坂口くんが、蓮に認めてほしいって思ってくれたなことが。


ところで、、、


『蓮さ。私が資料を渡した時、わざと私の手を握らなかった?』


今なら表情も蓮に見えない、誰もいないから、どんな答えが返ってきても大丈夫。


『気付いてたのか。ちょっとイライラを落ち着かせようと思って、チャンスとばかりにな』


それ、嬉しすぎる!
今、絶対に気持ち悪いくらいニヤけてる。

一人でよかった。
誰にもこんな顔、見せられない。


『それで、ちょっとはイライラ落ち着いた?』


素直に、ドキッっとしたとか言えばいいのに。

やっぱり私は可愛い気がない。


『うん、まぁ…かなり…落ちいたよ』


はぁ……もう……堪らなく、叫びたいくらい嬉しいよ!


『それはそれは、よかった』


同然、叫べるわけもなく、可愛いくないな。


ほんのちょっとの沈黙のあとー。



『なぁ…梓、今度の休み。行きたいとこあるんだけど、一緒に行かねぇか?』


蓮からのまさかのお誘いなんて、行くに決まってるよ!


思わず、うん、って言ったけど。


『どこに?』


『それは、その日にな!楽しみにしてろよ』


まぁ、蓮のことだから。

美味しいと評判の店とか、映画を観るとかだろう。


『楽しみにしとくよ』


『おう。じゃあ、また明日』


『うん、また明日ね』


おやすみ、と先に電話を切ったのは私だった。





それは、蓮から切られたら寂しいから。
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