これを愛というのなら
「私が運ばれたあと。事務所は大騒ぎだったんじゃない?」


ドアが完全に閉まってから、鈴木に聞いた。

蓮が、あんなことをするから。


「はい、そりゃもう!大騒ぎでした!だけど、チーフがすごくかっこよかったんです!」


今、あの二人が付き合ってるとか付き合ってないとか、騒ぐことじゃないだろ?

お前らは、同僚が救急車で運ばれて一刻を争う事態だってのに、心配すらできないのか?

まだ、騒ぎたい奴は今すぐ帰れ!



鈴木の話によると、チーフはそう言ってくれたらしい。


「チーフが一喝したあと、静まって。みんなは普通に仕事始めたんです。かっこよくないですか?」


興奮気味に話してくれる鈴木。


チーフにはちゃんと、お礼言わなきゃなぁ。


基本的に穏やかな雰囲気を纏っていて、怒る時だって、諭すように怒るチーフでも。

私は実際に見たわけじゃないけど、皆が静まるくらいの威圧感で、一喝する時がある事に驚いた。







「それよりも、倉本さんこそ料理長と付き合ってるんですよね?」


そりゃ、あんなとこを見たら誰だって、そう思うよね…


「う~ん……想像に任せるよ」


そう、答えた私に、え~…、と頬を膨らませたかと思えば。


「料理長もかっこよかった!だって、私が知らせに言った時も副料理長に、頼む、って一言だけ言って。厨房を飛び出して行ったんですよ!」


それに、口移しで水を飲ませちゃうし。


と、キラキラした瞳で言うから。


でしょ?


「当たり前じゃない。私が惚れた人だよ!」


ちょっと自信満々に言うと、キャッキャッと笑いだす。


本当に、鈴木はコロコロと表情が変わる。


まぁ、そのあとは。

鈴木の質問攻めだったけど。


蓮のどこを好きになった、とか。
いつから、とか。


利香が来てくれるまで、ずっと。

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