これを愛というのなら
「泣きすぎだろ?」


ライブ終わりの帰りの車の中ーー。

蓮への私の気持ちが重なったり、通じ合う前の気持ちと重なったりで。

バラード曲の大半は泣いていた私に、蓮はそう言った。


「だって…色んな感情と重なって…」


「わかるけど…泣きすぎだ!」


飽きれ気味に笑う蓮だって、バラードの冬の名曲の時に、瞳を潤ませてるように見えたけど?


とは、言えずに。


「冬のバラードね、私の蓮への気持ち…そのままなの」


いつもは私が言わされるから、今日は私から蓮に言わせたくて、
自ら普段は言わないことも言ってみる。


「…あれな…俺も…」


俺も?とわざと蓮に聞くと。


「聞かなくてもわかるだろ?」


あの曲んとき、梓が手を握ってきたから握り返した。と。


うん、それでわかったよ。

だけどね、今日は何がなんでも言わせてみせる!


「握って返してくれたの、嬉しかったよ。でもね、そういうのってちゃんと言ってくれないと…ねっ?」


「あぁ…!もうめんどくせぇな!」


俺も同じ気持ちだったよ。と、


「だから、梓も同じ気持ちだってわかったから握り返した!」


めんどくさい、と言いながらも照れながら、ぶっきらぼうな言い方だけど、
口にしてくれた事に、

勝った!と誇らしげになって、ふふっと笑うと。


「梓、こっち向いて」


そう言った蓮の方を向くと、不意打ちのキスをくれた。


信号待ちの交差点で。


「今、勝ったって思ったんだろ?俺にわざと言わせて」


お見通しだったことに、悔しい!

やっぱり敵わない……

唇を噛むと、それ、と。


「ほんとに可愛い…」


俺に勝とうなんて思うなよ、とアクセルを踏んだ。




はぁ……と心の中で溜め息をついた。

敵わないってわかっていて、勝とうなんて思った私がバカでした…




予想通り、彼らの曲は違って聞こえて、


「蓮、ありがとう」


連れてってくれて。


バックミラー越しに蓮を見て微笑んだ。


蓮は、また行こうな、とバックミラー越しに微笑み返してくれて。


「帰ったら…覚悟しとけよ!」


そう、言った蓮の瞳は色気を含んでいて。

私の心臓はドクッと跳ね上がった。
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