これを愛というのなら
「最低って思うだろうけど、好きだったのか…わからねぇ。ただ、寂しさを埋めてくれる存在だったって言えば、そうだし」


ただ、


「瑠美には感謝してる。俺が留学先で悩んでる時も逃げたいって思った時も、側に居て支えてくれたのは、瑠美だからな」



私の瞳からは涙が溢れていた。


蓮は、困った顔をして。


もう俺には過去の事だ、と。


頬に流れる涙を拭ってくれると。


「安心しろ。今は梓だけだから」


なんて言ってくれた蓮の首に、


私だけじゃないとイヤだよ、と腕を回して抱き付くと。

抱き止めてくれて。


「愛してる、梓」


耳元で、蓮が囁いてくれた。





さすがに逆上せた、蓮と私は。

缶ビール片手にベランダで夜風にあたっている。

蓮は、右手には煙草だけど。


「明日、ここに南を呼んでやれよ?」


突然、蓮がそう切り出した。


え?と蓮を見ると、


「俺から聞いた陽介と瑠美の事を梓から言うよりも…ちゃんと陽介から南が聞いた方がいいだろ?」


それに、と灰皿で煙草を消して。


「俺と瑠美が別れた後の事を、俺は知らないからな」


わかった。と、手を握ると。


ん?と私の顔を見た蓮だけど、私の手をいつものように握り返してくれた。


「そうだね。利香のことだから、私が聞いた事を言ったら、思い悩むだろうし」


ありがとう、と意味を込めて。

強く握ると、私を見て、少しだけ頬を赤らめた。



そして、


「俺もな、陽介と南には幸せになってほしいんだよ。陽介は、過去の女に何を言われても南を捨てるような奴じゃない」


だから、大丈夫だ、と。

心配するな、と微笑んでくれた。
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