これを愛というのなら
今日、仕事終わったら家に来て!

って、この満面の笑顔も本当に可愛い。


ついつい、行く!って言っちゃうでしょ?

だけどね、


「悪いわよ、二人の愛の巣へお邪魔するなんて」


そう、答えながらも無駄に勘のいい私は気付いてるよ。

二人の策略。



「そんなこと気にしないで。ちゃんと、チーフの口から聞いて。話し合ってほしいし」


やっぱり。

でもね。

本当のことを聞くの、怖いんだよね。

気の強い女を装おってるけど、本当は弱虫だから、私。



「昨日、梓から聞いた。きちんと陽介から聞け。陽介は南がいるのに、昔の女に靡くような奴じゃないから」


梓の横で、そう言ってくれた料理長を見上げると。

頭にポンっと手を置いた。


ほんの一瞬だけ、ドクッと心臓が鳴った。

何なんだっ?

この、安心感のある優しさは。


私は、どうやら陽介さんにベタ惚れのようでまず惚れることはないにしても。

弱ってる時に、こんな優しさを見せられたら、大抵の女は惚れるよ。


だからね、今日だけ。

この、安心感のある優しさに甘えて、

わかった、って。


「お邪魔します」


待ってるよ、と笑う梓の横で料理長は、

梓を見て、私たちに見せるよりずっと優しい顔をするんだから。

本当に、梓にベタ惚れでしょ。


なんて思いながら、料理長を見ていると。


「陽介には俺から、上手く言っとく」


って、また頭に手を乗せてくる。

不思議と怖さも消えていくじゃない。

絶対に大丈夫って思ってしまうじゃない。


そうか!

梓も、この安心感のある優しさにも惚れたんだろうね。


本当に、いい男を捕まえたね。

梓。
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