これを愛というのなら
だけど、今は……


陽介さんが言いかけた所で、


甲斐甲斐しく料理長の世話をしつつ、

キッチンで何かを作りつつ、ちゃんと話を聞いてくれていた梓が、


「ここからは、二人で話さなきゃ。蓮と私はベランダに出てるから」


料理長と自分のカーディガンを持って、言ってくれた。


そのカーディガン、いつ取りに行ったの?


たったの数十分の間に、色々しすぎだよ!


本当に梓って。

器用で、気が利くし、頭がよく回る。


「そうだな。ちゃんと伝えてやれよ、今の気持ち」


梓からカーディガンを受け取った料理長は、

それを羽織りながら立ち上がって、陽介さんの肩をポンっと叩いた。


そのあとだよ!

カーディガンを羽織った梓の手を取って、立ち上がらせてあげるんだから。

普通はなかなか、しないよね?

それを然り気無くしちゃう料理長は、物語の世界から飛び出てきた王子様だよ!


梓は、梓で。

テーブルに置いてある料理長の煙草とジッポを持って、

これまた、いつ取りに行ったんだかわからない、缶ビール2本を料理長に渡して。

目が合っただけで、微笑むから。



そんなことに、縁遠くなった私には刺激が強すぎるよ。
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