これを愛というのなら
二人がベランダに出てくれて、すぐに。

陽介さんは、咳払いをして。

大きく深呼吸をしてから。


「今は…利香がいる。俺は…利香を愛してる」


顔が熱くなったのが、わかる。

そして、生温い液体が頬をつたう。


「瑠美と話してる所を見てたんだろ?」


うんうん、と頷いてる私の頭を優しく撫でてくれる。

久しぶりってわけじゃないのに、嬉しいよ。

完全に…涙腺崩壊。

涙が止めどなく、次から次へと溢れ出すんだけど………

もう……どうしよう。


「きちんと、瑠美とは話をつけてくる。だから…俺を信じて待っててほしい」


はい、涙声で答えて。

ぼろぼろの顔で陽介さんを見上げると。


泣きすぎ。と、

涙を手で、拭ってくれるんだけど…

拭っても、拭っても流れてくる涙に、拭う事を諦めた陽介さんは、


カーテンの開いているベランダに、視線を移していて。

たぶん、助けを梓に求めたんだろう。


だけど、ベランダ見てみろ、と指でベランダを指した。


そのベランダで。

缶ビール片手に、

お互いの腰に腕を回して笑い合っている、料理長と梓。



「仲良いよね、あの二人。お互いに、ベタ惚れなの伝わってくるよ」


思わず、ぼろぼろの顔から笑みが溢れていたのがわかった。


その、私の顔を見ていたらしい陽介さんは、


「やっと、笑ったな。本当は今すぐ抱き締めて、キスしたいけど…さすがに帰ってからだな」


私の頭を優しく優しく、撫でてくれる。



私だって、今すぐ抱き締めてほしいし、

キスしたいよ。

陽介さんの温かい腕の中と、優しいキスが大好きだから。


だけどね、

それを今、ここでするのは私たちの柄じゃない。


私たちが見てるかもしれないのに、

あんな事を出来ちゃう、ベランダの二人が羨ましいけれど。





陽介さんが、窓をコンコンと叩くと。

気付いた二人は、中に入ってきて、


「よかったね」

「よかったな」


同時に言ってくれた。
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