これを愛というのなら
さて、ここからはーー。


ブライダルフェアの代役を務めてくれている、梓に代わって、

利香が、話を進めていくわ。


よろしくお願いします。


ーーーーーーー。


「うわっ!梓、綺麗よ!料理長もカッコいい!」


山田さんに呼ばれて控え室に行くと。

鏡の前で向き合って立っていた二人に、目を奪われた。

いつも以来しているモデル事務所には失礼だけど……

私は、この二人の方が断然、素敵だと思う。


梓は、きちんと化粧をすると可愛いより綺麗になって。

ベルラインのドレスもよく似合っている。

もう、この綺麗さは言葉では表せないよ。


料理長だって、フロックコートのタキシードが、背が高いからよく似合っていて。

長めのエアリーヘアの髪を、無造作にワックスでスタイリングされていて。

いつもと違う感じが、料理長のイケメン度合いを、さらに上げている。



山田さんに、ブートニアを付けてもらった料理長と。

二人のお似合い度と、完成度に言葉を失って。

立ち尽くしていた介添えさんに、ブーケを渡された梓に。


「衣装チェンジ毎に、写真を撮るからね!」


言ってみると、なんで?と言った梓。

なんのために?と言った料理長。


「決まってるじゃない!二人の写真を、この式場のウェブカタログに使うのよ」


冗談でしょ?

梓がそう言ったあとで、

やめてくれよ、と料理長が言ってもね。


「今日、珍しく来てる社長の許可は取ってるから諦めて。こんな、お似合いの絵になるカップルなんて…早々いないんだから!」


流れるように、瞳を合わせた二人は。

同時に溜め息をついて、頷き合っている。

言葉を発しなくても、意志疎通してる二人がすごい!

どれだけ、お互いを見て生活してるんだろう。



「最初で最後だからな」


料理長に、許可を頂いて。

梓も、首を縦に振っていて、許可を頂いた二人を連れて。


馴れないインカムに、連絡が入った所で、

チャペル前に待機すると。


エスコートさんまで、


「料理長と倉本さんですよね?」


思わず確認しちゃうほど、二人がお似合いで、素敵ってことね。



では、開けます!

小声でエスコートさんが言ったと同時に、

腕を組んで立っていた二人は、瞳を合わせて、

頷き合って、同じタイミングで大きく深呼吸して、

微笑み合って、

エスコートさんと私が開けた、ドアの向こうへ、

ゆっくりと進んでいく。

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