これを愛というのなら
まさかの陽介さんが、

社長へ結婚宣言するなんて思わなかったけれど。

今日の模擬披露宴も無事に終了!




撮影中も、二人は二人の世界に入り込んで。

どれだけ…くっついて笑い合えば、気が済むんだろう。


そういえば、年末にお邪魔した時も、何かとくっついてた。

梓から、料理長の背中にくっついたり。
料理長が、梓を後ろから抱き締めていたり。

梓が、料理長の隣に座っている時は。
ずっと太腿に手を置いて、肩に凭れかかってみたり。

料理長は、梓が凭れかかると肩に腕を回して、梓の髪を弄っていたり。


私たちがいるのに。
これだけ、くっついて居られることが羨ましいって思うよ。



そして、今は。


和装のお姫様抱っこに、額コツン、微笑み合う。


たしか、昔ハマった恋愛シミュレーションゲームの戦国もので見たわ、こんなスチル。


(ここだけの話。作者の紫音さん曰く、料理長はこのゲームの武将さんのイメージで、書いてるらしいですよ!髪型とか切れ長の瞳とか諸々)


所詮は、2次元の世界って思ってた映像を。

今、目の前にすると、自分じゃないのに…ときめいてしまってるのよね。



これが、作られたものじゃなくて。

幸せそうに、戯れて楽しそうにしてる、二人だから。

こんなにも、ときめいちゃってるんだろうね。


本当に、お互いに心の底から信頼し合って。

愛し合って、深く強い絆で繋がってるんだろうね。

誰にも絶ち切れない、二人の赤い糸が見えた気がするよ。



私もね、陽介さんと。

この二人みたいに、なれてるんだろうか。

例え今は、なれてなかったとしても……いつかはなれたらいいな。


隣に立っている陽介さんを見上げると、


「今、羨ましいって見てただろ?俺たちも二人に負けないくらい愛し合ってるだろ?違うのか?」


イタズラっぽく笑って、そんな事を言うもんだから。


「違わないよ。ただ、私はお姫様抱っことか女の子がされたら嬉しいこと、されたことないなぁって…」


つい、撮影中の二人と久保さんしかいないし。

この空間に、甘んじて言ってみると。


「してほしいなら、言えよ。俺は蓮みたいに王子様気質じゃないから、さらっと出来ない」



スーツのズボンのポケットに、手をいれたまま。

二人を見ながら、言ったくせに。

利香。と二人だけの時の甘い声で呼ぶと……

私の身体を、ふわっと持ち上げてくれる。


慌てて、落ちないように陽介さんの首に腕を回すと。

ぐっと近付く顔に、一気に熱を感じる顔。

その額に陽介さんから、額をくっつけて、微笑んでくれるから。

大好きな人との憧れのシチュエーションに、嬉しくて嬉しくて。

私も微笑み返すと。


「利香、愛してる」


耳元で、私にしか聞こえない声で囁いてくれる。


頷いて、また陽介さんの額にコツンとすると。



視線を感じて、視線の先を辿ると……

料理長と梓が笑いながら見ていて、

久保さんは、カメラのシャッターを押している。


二人も付き合ったんだ、とカメラを向けながら久保さんに言われて。


顔が赤く染まっているだろう私に代わって、

はい、と照れくさそうに答えて。


「今、撮った僕たちの写真は現像して、こっそり下さいね?」


私の身体を下に、そっと下ろして言ってくれた。


すると、久保さんは。


「じゃあ、誰もいないし特別に。今のお姫様抱っこで、4人で撮ろうよ!」


そんな提案をしてくれて、改めて言われると恥ずかしいな、と。

陽介さんも料理長も、同じ事を言いながら。

お姫様抱っこをして、久保さんに言われるがまま、

額を合わせて微笑み合った瞬間に、シャッター音がして。

料理長に、お姫様抱っこされたままの梓を見ると。

赤い顔で、でも幸せそうで。


「利香、顔が真っ赤」


先に言われちゃったから、梓もね。


「これを、してるこっちも照れるんだぞ」


料理長が言うと、そうだな、と陽介さんも恥ずかしそうに笑っている。


ごちそうさま、と久保さんに言われて。

下に、解放された私と梓の身体。





「この写真は現像して、それぞれに渡すよ。いいのが撮れたから」


久保さんが、そう言ってくれたと同時に。

時間が来て、終了となった。


じゃあ、またね、と久保さんが出て行ったあと。


「仕事中に何やってんだろうな、俺たち」


真面目なことを呟く陽介さん。

陽介さんらしいんだけどね。


「真面目だな、相変わらず。こんな時くらい、いいんじゃないか?」


料理長に言われて、そうかもな。


「おかげで、利香が意外と乙女だって気付いたよ」


私を見るから、そうよ。


「今度は、何をしてもらおうかな?」


笑いながら言ってみると、

二人だけの時にしてくれ、と笑いながら返してくれた。



二人のおかげでまた、陽介さんと分かり合えた気がする。

ありがとう。
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