これを愛というのなら

今から、１０年前に。

彼とは…バイト先で知り合って、自然と付き合うよう事になったんだけど。

彼は、大学が地元じゃなかったから卒業して、実家に帰っちゃったんだけど…

遠距離で１年、付き合ってた。

すごくすごく好きで、寂しかったけれど。

それでも、１ヶ月に2回も会えるだけで幸せだった。

だから、彼の地元で。

彼と同じ、結婚式場で働きたくて。

そこを受けようと、決めた時。

妊娠してることがわかって、彼に伝えると。

結婚しようって言ってくれて、受けるのを諦めた。

彼が私の両親に挨拶に来て、両親も許してくれて。

一晩、私の実家に泊まった彼が地元に帰る途中。

彼は交通事故で亡くなった。

残された私は、毎日毎日、部屋に閉じ籠って、泣きながら過ごしてたんだけど。

母に、いい加減しなさいって。

お腹の子はどうするの？って怒られて。

ようやく、彼との子を産んで育てる覚悟が出来て。

部屋から１階に行こうとした時に、階段から落ちて……流産した。

辛くて辛くて、どうしようもなかった。

もう涙なんて枯れるんじゃないかってくらい、泣いた。

だけど、父に。

彼が働いてた業界に飛び込んでみろって。

あの子は、お父さんに、僕の姉貴が結婚した時に幸せな瞬間のサポートを出来る仕事っていいなって思って就職したって言ってた、と。

それを彼は、自分自身で成し遂げようとしてる矢先に亡くなってしまった。

だから、梓が成し遂げてやれ。

彼の分まで、お腹にいた彼の子供の分まで幸せになるために。

って、言ってくれてブライダル業界に飛び込んだ。

今の私があるのは、彼が父に言った言葉があるから。

蓮に会えたのも、彼のおかげだと思ってる。

でも、忘れられない。

蓮をどんなに好きでも忘れられない。