愛を語るには、一生かけても足りなくて。
「おい、ユウ? 俺の話、聞いてるか?」
「ん……ごめん。今ちょっと、寝落ちかけてた」
ハッキリとしない意識の中で、俺は今日も記憶の中で微笑む"彼女"のことを思い出していた。
「寝落ちかけてたっつーか、今、完全に寝てただろ」
運転席でハンドルを握っているのは俺のマネージャーを務める戸村圭介こと、通称ケイちゃんだ。
ケイちゃんは見た目は所謂イケオジの三十七歳で、俺が十七歳のときに芸能界入りしてからずっと、面倒を見てくれている実の兄のような存在だった。
「ここのところ連ドラの撮影や、映画の番宣で忙しかったもんなぁ〜」
「うん。でも、暇よりはずっといいよ。余計なこと考えずに済むし、仕事のことだけ考えていられるのは嫌いじゃない」
頬杖をつきながら黒いスモークの貼られた窓の外を見れば、今年もクリスマス色に染まった街が目に入った。
そういえば、十五年前に彼女と別れたのもこの季節だったな。
『ユウ、ごめんね……』
目を閉じれば瞼の裏に、俺を見て大粒の涙を溢した彼女の姿が蘇る。
あのときのことを思い出すと後悔ばかりで、俺は自分勝手なガキだった自分を、力いっぱい殴りつけてやりたくなるんだ。