愛を語るには、一生かけても足りなくて。
「ほんと、お前さんは欲がないっつーか真面目よな。普通は忙しくなればなるほど、次の休みはいつだとか、スケジュールの空きを作ってくれって迫ってくるもんなのによ〜」
呆れたようにも嬉しそうにも、俺を心配してるようにも聞こえる声色で言ったケイちゃんは、ルームミラー越しに後部座席に座る俺を見ていた。
「いや……寝てていいって言うなら俺もずっと寝ていたいけどさ」
「ハハッ。お前はほんと、寝るか仕事するかの二択だよな。まぁ、身体にだけは気をつけてくれよ。今や、渡良瀬 有は、うちの稼ぎ頭のひとりなんだから」
そう言って小さく笑ったケイちゃんを、今度は俺がルームミラー越しに見た。
そうすればケイちゃんは、どこか懐かしそうに目を細めてから前を向く。
俺はケイちゃんの優しいその目が、結構好きだったりもするんだよ。
なんて、本人に言ったら無駄に喜びそうだから、言わないけど。
「いやー。しかし、あのヒョロくてチビっこかったユウが、今じゃ超人気俳優の仲間入りだもんなー。俺も感慨深いよ」
赤信号で止まった車の中でそんなことを呟いたケイちゃんの視線の先には、いつ頃撮ったものだったか。
女性用の化粧品の広告ポスターとなった俺が、街のど真ん中に無駄に大きく飾られていた。