愛を語るには、一生かけても足りなくて。
「アヤメ〜、今日はほんとにごめんね」
十二月。今年もクリスマス色に染まった街は、不思議とどこか温かい。
販売員の制服から私服に着替えた同期のミイナは、店舗にひとり残る私、井関アヤメを見て申し訳なさそうに両手をあわせた。
「まさか、福田さんが家の都合で早退することになるとは思わなくて……。今からラストまでアヤメひとりになっちゃうけど、本当に大丈夫?」
そう言うミイナはこのあと、海外出張から半年ぶりに帰ってきた彼とのデートの予定が入っているのだ。
そのため、随分前から今日だけは早めに仕事を上がる希望を出していたのだけれど、先輩販売員が早退したことで帰りにくくなってしまっていた。