愛を語るには、一生かけても足りなくて。
 


 きらびやかなシャンデリア。

 上品なデザインにまとめられたお店の中には、一見シンプルながら、繊細なデザインが施されたエレガントなジュエリーたちが並んでいる。

(よし、ラストまであと少し。がんばろう)

 改めて背筋を伸ばした私は、クリスマス限定ジュエリーが紹介された小冊子をショーケースの隅に並べ直した。

 ──ここは銀座の一等地に本店を構えるジュエリーブランド、【Luna(ルーナ)】の自由ヶ丘駅前店だ。

 私は短期大学を二十歳(はたち)で卒業してから約六年、ここでジュエリー販売員として働いている。

 ジュエリー販売員になりたいと思った理由は、些細なものだ。

 子供の頃に"大切な人"からオモチャの指輪を貰ったときにとても嬉しくて、いつか自分も"誰かの幸せの手伝いがしたい"と、漠然と思ったのがキッカケだった。


「あれから、もう十五年かぁ……」


 あのときもらった指輪は、家にある鏡台の引き出しに今でも大切にしまってある。

 ピンク色でハート型のガラス石がついた指輪だった。

 ……結局、それをつけられたのはたったの一度きりだったけれど。

 そっと左手の薬指を撫でれば、私を見て恥ずかしそうに笑った"彼"を、今でも鮮明に思い出すことができた。

 
< 6 / 37 >

この作品をシェア

pagetop