異世界転生したから、楽しくスローライフを送りたい!!

そんな私の疑問に、ルーチェさんは楽しそうに答えてくれる。

「そうだね。自分の森に住む者たちとは、仲良くなれるよ。ほら、いまも実はシーナを見に来ているよ?」

指し示された先には、ドアのふちに止まる小鳥とリスの姿が見えるし、その奥の方に離れたところには鹿もいるのが見える。

「私を見に来ているの?」

少し距離もあるし、あまり視線は感じないんだけれど。

「様子伺いの状態だね」

「そうなんだ。視線が合わないけれど、そういうもの?」

私の疑問に、ルーチェさんは面倒な顔もせずにしっかり答えてくれた。

「動物っていうのは、目を合わせると喧嘩の合図みたいになるものも多いんだよ。だから、視線を外して、お互いに様子を探り合うのさ」

そういうものなのか。
動物とは仲良くなるのに時間がかかりそうだ。

「まぁ、ここには動物だけでなく、妖精も精霊もたまに来るから、そのうちシーナも会えるだろうさ。とにかく森に慣れてくれればいいから。ここと、辺境伯邸とを行き来して慣れたらいい」

そんな話をして、私はこの日夕食までの間をルーチェさんのお家で過ごすことになった。

でも、薬師としてお薬を作っているのでルーチェさんは忙しい。
そして私は暇を持て余してしまった。
そんな時、部屋の棚にある箱が気になり始めた。

「ルーチェさん。この箱はなにが入っているの?」

私の問いかけに、薬草を煮込みつつルーチェさんが答えた。

「その箱の中身は、裁縫セットだね。なんだい、気になるのかい?」

それに頷いた私に、ルーチェさんは箱を棚から降ろしてくれた。

「まぁ、あまり大したものは入っていないが中の物は好きに使っていいよ」

差し出された箱の中には、基本的な針と糸が入っていたし、はさみもあった。
そして、箱の中にあった布地。これは……。
艶感が違う上に、どうやったらこんなに良い加工ができるのか分からないけれど、これは毛皮ですよね?

こんなものが入っている、裁縫道具ってなにに使っていたんでしょうか?
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