異世界転生したから、楽しくスローライフを送りたい!!
辺境伯領の森の魔女
リーネが連れて行く予定の場所は侯爵領の隣の辺境伯領にある、魔女の森だった。
前世の記憶を取り戻してからの私は、余程でなければ泣かず、魔力も極力漏らさずに過ごせるようになっていた。
なにせ、中身はアラサーだからね。
精神が安定すれば、魔力の暴走も、意識せぬままに溢れさせて、弱い人を魔力酔いさせることも無いのだ。
しかし、そうであってもリーネ自身が既に七十代後半と、体力の限界に来ていた。
大人しいとはいえ、成長し重くもなった六歳の子どものお世話は、リーネ世代にはきついものがある。
そして、私を捨てることを指示されたリーネは、侯爵領の魔女の森ではなくあえて、三日の馬車の旅を要する辺境伯領の魔女の森を選んだ。
私は、心配になりリーネに尋ねた。
「どうして、近くの森の魔女じゃなくて、遠くに行くの?」
私の質問に、リーネは真剣な表情で教えてくれた。
「侯爵領の森の魔女は、気性の荒い火魔法の得意な魔女なのです。私は、シーナ様に穏やかに、お過ごし頂きたいんです」
そう言ったリーネは、辺境伯領の森の魔女について教えてくれる。
「辺境伯領の森の魔女様は、別名薬師の魔女と呼ばれる方です。穏やかで優しく、得意なのは薬術です。きっとお願いすれば、シーナ様を優しく魔女の道へと、お導き下さいます」
そしてリーネは、辺境伯領の魔女さんとは遠い親戚なのだという。
自身の出身も、辺境伯領だと教えてくれた。
「私も今後は辺境伯領で過ごしますから、時々森に会いに行きますからね」
私はリーネとお別れではないことに、安堵した。
そうして、馬車に揺られて三日。
辺境伯領の薬師の魔女の住む森へと、私とリーネはたどり着いたのだった。