異世界転生したから、楽しくスローライフを送りたい!!
森に近い裏口の方から戻ると、やはり屋敷の中の雰囲気が忙しさとともに緊張感が漂っていた。
辺境伯と侯爵なら爵位的には同等か、やや辺境伯の方が国の守りの要を担うから上かなって感じる。
この国での感覚が分からないけれど、たぶんそこまで間違いではないと思う。
ただ、ウォレント侯爵はそのあたりあまり考えてなくて爵位をゴリ押しできているのではと思う。
この屋敷に漂う緊張感は、そんなゴリ押しな侯爵が原因な気がする。
だって、ここの使用人たちは自分たちを大切にしてくれる領主であるお父様とお母様をしっかり支えてくれる優秀な人達だから。
そこに主人に対してゴリ押し貴族なんかが来れば、雰囲気悪くなるのも頷ける。
パタパタとお客様のために動いているだろう、侍女のミラが私とルーチェさんに気づいた。
「まぁ、お嬢様。今日はルーチェ様の所にお泊まりのご予定でしたよね? 大変、執事長を呼んでこなければ!」
そんなミラに背後から来たのは、探していた執事長のアンドレである。
「あぁ、お嬢様。お戻りですか? 旦那様が、万が一お嬢様がお戻りになったら応接室にお連れするようにと。そのおつもりでしょう?」
お父様は、こんなに短期間の間でもしっかり私のことを分かってくれているみたいだ。
それはきっと、私に今話してくれているアンドレも同じ。
それがすごく嬉しい。
「アンドレ、ありがとう。私、どうしても自分の言葉で言いたいの」
そんな私にアンドレもミラも頷くと、ミラが私に言った。
「それではお嬢様、簡単に身支度致しましょうね」
ミラの技術によって、あっという間に可愛いお嬢様が完成した。
このドレス、お母様の夢を詰め込んだ感じね。
男の子しかいなかったお母様は、私が来てから楽しそうにどんどん服を増やしていく。
今着せてもらったこれも、そんなコレクションの中の一着だ。
可愛らしい花柄に、蝶のようなレースのリボンで飾られた可愛いふんわりしたお姫様ドレスだ。
確かに、こんなに可愛い格好は生家では無かった。
白かクリームのシンプルな飾り一つないワンピースだけ。
庭を歩く姉妹は、綺麗で可愛いドレスだったのを私は見ていて知っている。
これなら、ここで大切にされていると、視覚でも分かりやすく認識できるだろう。