異世界転生したから、楽しくスローライフを送りたい!!
応接室の前に着くと、中から声が聞こえてきた。
「だから、ここに来た娘は私たちの子なのよ。早く返しなさい!」
そんな女性の高めの声に、男性の声も続く。
「我が、ウォレント侯爵家の娘なのだ。 次代の魔女でもあるし、あの子はウォレントの森の魔女だからな」
とことん、勝手で斜め上発言の連発にはため息しか出てこない。
自分たちのことしか考えていないのが丸わかりである。
『トントン』
ドアをノックすれば、中からお父様の声がした。
「あぁ、来たんだね。入りなさい」
その声に、アンドレがドアを開けてくれた。
部屋の中に、私と髪の色が同じ女性と、顔立ちの似た男性がいるがほぼほぼ初めまして状態。
まぁ、産まれてすぐから人任せで放置していたんだからそうなるわけで……。
私はガルムトアの父と母の間に自ら進んで行き、父と母に声をかけた。
「お父様、お母様。こちらのお客様はどなた?」
ぽかんとした本来の親の顔は傑作だった。
そりゃ、育ててもらった覚えも、会った覚えもない人だもの。
私、普通の幼女の感覚で接してましてよ!!
「あぁ、シェーナリンデは初めましてだよね。この方たちは隣の領のウォレント侯爵夫妻だよ。
シェーナリンデのことを、自分の子だといって来たんだけれどね。覚えているかい?」
うん、お父様もお母様も分かっていて言っているね。
ありがとう、乗っからせてもらうね。
「えぇ? シェーナ、この人たち会ったこともないのよ。私のお父様とお母様は、いま隣にいるもの」
ニコッと最大限の笑顔で言う私に、ウォレント侯爵夫妻はぽかんからのお口パカー状態へ。
幼女だけど中身アラサーだからね、計算づくでやっちゃうよ!
そろそろ、六歳児じゃなくてアラサーの方でガツンと言わせていただこうか……。
「シェーナ! よく見てくれ。君の瞳は俺と同じ碧だろう? 髪はミランダと同じ銀髪じゃないか!
君と私たちは似た特徴を持っているだろう? 僕らが本当の親なんだよ。だから、ウォレント侯爵家に一緒に帰ろう!」
うん、本当にこんなのが領主でお隣は大変だな……。