異世界転生したから、楽しくスローライフを送りたい!!
だが、ここは緑の魔女の領域である。
彼女の領域ではない故に、普段とは違い魔法も上手くは発動しないだろう。
そもそも、この地の精霊たちが彼女にくみすることが出来ない。
ここにはすでに緑の魔女とその次代がいるのだから。
精霊は自由ではあるが自分の領分の中で生きることもできる。
地域性を多分に持ち合わせている、不思議な存在である。
自然に多数いるが、それとて場所が変われば精霊の属性の分布が違うのである。
ここは緑と言われるだけあり、地や樹、草などの属性の精霊が多くを占めるが、赤の魔女の領域は火や光の精霊が占めているのだ。
そんな彼女は、なぜ会いに来たのか?
それは、自分の次代を見つけたいのだろう。
ルーチェに次いで長く魔女を務めているのが赤の魔女である。
だが、今現在ではルーチェが一番に次代を育てる時期に入っている。
これを逃すと、また大きな魔力持ちの子どもが現れないとなかなか次が見つからないのだ。
このままで、ルーチェからシーナに引き継がせたいのがガルムトアの考えである。
しかし、正式なお披露目前なら次代が師匠に臨む魔女を変えたら監督者を変えなければならないのだ。
だが、やっと見つかった緑の魔女の次代をガルムトアとしても手放せないし、シーナはすっかりこの辺境伯邸の可愛い末姫なのだ。
だれもが、このままこの地で生きて行けるよう温かく見守りながら、その成長を促してきたところなのだ。
横からかっさらわれてはたまったものではないのである。
そんなわけで、現在辺境伯邸はピリピリムードの臨戦態勢へと突入していた。
そうした空気の中で、クランツの隣で見守っていたマーガレットが言った。
「次の魔女もガルムトアの娘ですから。この地は安泰ですわ。ウォレントも侯爵様に頑張っていただいてはどうでしょう?」
にこやかに、自領で次をなんとか探せというマーガレット。
先日精霊が怒ってウォレントには当分精霊が増えそうにないし、むしろ減りそうなのにこの言いよう。