異世界転生したから、楽しくスローライフを送りたい!!
精霊の多い土地は自然と魔力の大きい子も産まれやすい傾向にある。
つまり、闇と光の精霊がいたにもかかわらず見限られてしまったウォレントには、今後長い期間大きな魔力を持った子は現れそうにないというのが現状だ。
さすがにそれには気づいたのだろう赤の魔女は行動に移したのだ。
緑の魔女が育てている次代を自分の次代に置き換えることを。
しかし、赤の魔女には分が悪いだろう。
なにせ、シーナはウォレントに帰る気がないのだから。
しかし、今回はシーナを出さずになんとかお引き取り願わなければ。
クランツは肩に力を入れて、赤の魔女と会話を再開した。
「赤の魔女。次代は元はウォレントの娘だった。しかし、今のウォレント侯爵家は大きな魔力持ちが生まれていなかったせいで、久々に生まれたその魔力持ちの子を捨てたのだよ」
さすがに、そこは知らなかったらしい。
赤の魔女は目を見張った。
「なおさら、本来なら私の次代じゃないの」
そういうものの、それが厳しそうなことは察したらしい。
魔女のしきたりにはやや、疎いものの自分の望む方向には話が進まないことを感じ取りつつも、彼女は粘った。
「ここなら、つぎの魔女だってすぐに見つかるのではなくって?」
「いえいえ、ルーチェ様は既に三桁を超えておりますから。やっと見つかった次代は大切ですよ」
絶対に譲らないという意思を真っ向から赤の魔女にぶつけたクランツに、魔女は言った。
「ダメもとで来て見たのよ。私だって魔女の端くれ。次代を育てる苦労は分かっているつもりよ。私はもう少し時間があるからゆっくり考えるわ」
予測よりあっさり引いたので拍子抜けしたクランツに、赤の魔女は少し笑って言った。
「私だって三十年魔女をしているのよ。さすがに少しは成長するわ」
実は久しぶりに顔を合わせたクランツと赤の魔女。
赤の魔女も、魔力検定を受けるまではガルムトアの農家の子だった。
それが大きな魔力持ちだったために、隣の領地の魔女の次代になった。
帰れないと分かっていても、隣の領地の魔女になった赤の魔女は、本来は考えることのできる人なのだろう。
なんとか、落ち着いて赤の魔女は一言残して自分の森へと帰って行った。
「魔女集会で会うのを楽しみにしているわ」
こうして、突然の来訪は予測より、あっさりと終わりを告げたのだった。