僕は愛した人の悪役
「あたしたちはあんたの味方だよ。だからこれ以上、自分の本当の性別を誤魔化して生きていってほしくない。人生って一度しかないんだよ?それを全部嘘で固めちゃうなんて苦しいだけだよ」

二人の優しい言葉に、女の子として生きていきたいという思いがさらに大きくなってあふれていく。僕……いや、私はーーー。

「もう男として生きるのは嫌だ!女の子になりたい!」

可愛い服が着たい、手芸やお菓子作りを楽しみたい、好きな芸能人のことを話したい、こんな筋肉質な体じゃなくてふっくらとした体を手に入れたいんだ!

「村田さん、ご両親に私と一緒に気持ちを伝えましょう」

「あたしもそばにいるよ!」

二人に強く手を握られて、見つめられて、私は幸せを感じる。こんな風に感じるのは初めてで、また泣きそうになるんだ。

私は、悪役なんかじゃない。この世界でたった一人しかいない異性を好きになる女の子。

これだけは生涯変わることはない。
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