僕は愛した人の悪役
「今日から転校してくる村田くんね。初めまして!担任の深瀬(ふかせ)と言います」

僕の担任になるのは女性の先生だ。色白で華奢な体をしていて、髪を結んで化粧をしていて、本当に羨ましい。そのお腹は大きく膨らんでいた。

「私ね、もうすぐ実は産休に入っちゃうの。だから少ししか村田くんとは関わらないけど、困ったことがあったらいつでも言ってね」

深瀬先生はそう言い、お腹を愛おしげに撫でる。赤ちゃんを産むことができる、それが羨ましかった。

「……もう名前とかって決めてるんですか?」

僕が訊ねると「ええ」と嬉しそうに先生は微笑む。そしてお腹を撫でながら言った。

「生まれてくる子は女の子なんだけど、ほら、最近はジェンダーレスとかよく聞くでしょ?だからこの子が性同一性障害でもいいように男女両方で使える名前にしようって旦那と話してるの」

これを他の人が聞いたら、「素敵」とか思うのかもしれない。でも僕は違う。偏見や差別の目を向けられる僕は歪んだ考えしかできない。
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