僕は愛した人の悪役
「上野ってさ、レズらしいぜ」

「そうそう!うちの学校の生徒が見たらしいぜ。上野が同じクラスメートの前川とキスしてるところ」

「あいつ、可愛いから狙ってたのに自分で「レズです」って言ってたらしいからなぁ〜」

「レズとかってさ本人の思い込みだろ。同性とイチャついたって何も面白くないし、気持ち悪いじゃん?」

笑いながら言う友達の言葉が次々と心に刺さっていく。どの場所に行っても変わらない。同性愛者や性同一性障害という普通とは違う人たちは、こうして差別や偏見を受け続けなくちゃいけないんだ。

「ちょっとやめなさいよ!」

僕の心が悲鳴を上げかけた時、怒った声が響いた。横を見ればさっきまで女子の輪の中にいたはずの友達ーーー香織(かおり)が立っていた。香織は僕以外の全員を睨み付ける。

「気持ち悪いとか言ってるけど、それって完全に性的マイノリティを持っている人への差別だからね!?」

「い、いや、差別ってわけじゃ……」
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