僕は愛した人の悪役
香織の言葉に言い訳を友達は汗をダラダラ流しながら話す。でも香織は表情を変えることなく言った。

「ねえ、小説家の江戸川乱歩って知ってる?彼は初めて好きになったのは男性で、同性愛について研究してたんだって。あと、世界的に有名なレディー・ガガは両性愛者だと公表してる。他にも性的マイノリティを持っている有名人は調べればたっくさんいるよ!それでもまだそんなことが言える?多くの人を敵に回すことになるけど……」

半ば脅迫のように香織は言い、友達は顔を真っ青にしている。僕は「すごいなぁ」と呟いていた。

恐れることなく「差別なんておかしい!」と言える香織も、自分の性的なことを話せる上野さんも、どっちもすごい。そしてこんな臆病な自分がますます嫌いになる。

『お前、気持ち悪いんだよ!!』

過去のことが頭に浮かぶ。やっぱり僕は君にとっては悪役だったんだ。



それからも性別を隠すという苦しい日々は続いた。何度死にたいって思ったかはわからない。

友達はあれから性的マイノリティについて話すのをやめた。でも、心の中では偏見を持ってるんだろう。彼らの目がそう物語っている。
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