まつげにキスして

『!!えっ?!?!』

―ヒュウッ。

気まぐれな北風が大きな音を立てて二人を冷やかした時だった。

『あぁぁっっ!!!!』

北風がふわりとマフラーを彼女の手から攫い、そっと離れて行く。

「うわ…やばっ!!」

咄嗟に自分が作った最後の砦のような3歩の距離を一気に縮める。

ぶつかりそうになった彼女のお腹の辺りを後ろからぎゅっと抱きしめ、飛んでいったマフラーに手を伸ばす。

だが、後一歩というところで無念にも届かずに、ひらひらと呑気に体育館裏の木の茂みのてっぺんへと落ちて引っ掛かってしまった。














「……………。」

『……………。』

呆然とする二人。

―うっ…ヤバイ…。

あまりに突然の出来事で心中焦り一色、頭の中は真っ白で、何から言い出したら良いかわからず、謝ることも出来ず。

その時、彼女が途切れ途切れに声を発した。
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