キス・ミー・クイック
マティーニ
「いらっしゃいませ」


ここは、知る人ぞ知る穴場のバー、「ウルド」。


俺――柏木涼は、一週間前からここで働いている、バーテンだ。


働いている、といってもまだまだ駆け出しで。


マスターの足元にも及ばないため、シェイカーは振らせてもらえない。


もっぱら給仕や片づけが仕事だ。


いつかマスターに変わってシェイカーを振る日を目指して、鋭意努力中。


カウンターに座った男性に、コースターとおしぼりを出す。


喫煙するか確認して、灰皿を用意した。




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