キス・ミー・クイック
これは明らかな牽制……いや、排除?


どうやらこちらの常連客は彼女と特別な関係にあるらしい。


あからさまな誘いをビトウィーン・ザ・シーツが持つナイトキャップ(寝酒)の性質を持ち出してスマート(というよりは少し嫌味?)に断っている。


なんとも大人なやりとりだ。


俺にはまだここまでの切り返しはできない。


カクテルを返された三つ揃えの男性は、はじめは状況が分からずきょとんとしていたけれど、徐々にその顔が赤くなっていくところを見ると、意味を解したのだろう。


せっかくのカクテルに口も付けず、勘定を済ませるとそそくさと店を後にしていった。


「ありがとうございました」


『またのお越しをおまちしております』とは、とてもいえなかった。






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