キス・ミー・クイック
「余計なお世話……だったかな?」


フィリップモリスに火をつけながら、ようやく砂夜さんに声をかけた石垣さん。


「そう、見えた?」


石垣さんに視線もやらずに応える砂夜さん。


「そうは見えなかったけど。……かなり自分の願望が入ってたからね」


煙を吐き出しながら応える。


「あなたが断ってくれてよかった。あたしが断るより面目が立つでしょ」


ひじを突いた右の手のひらにあごを乗せて、唇を薬指で撫でる。


映画を見ているような、まるで現実味のない世界が二人を包んでいた。




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