キス・ミー・クイック
扉が開く音がして振り向けば、新しい客。


「いらっしゃいませ」


声をかけると男性客は見慣れない俺に軽く目を瞠ったが、目顔で挨拶をして迷わずカウンターへ向かってくる。


コースターとお絞りを用意すると、カクテルグラスを手にしたマスターが無言で灰皿を指した。


うなずいて返し、灰皿を用意する。


そんな俺の横をすり抜け、マスターが琥珀色が揺れるグラスを彼女に差し出した。


「ビトウィーン・ザ・シーツです。……あちらの男性から」


ちらりと視線を三つ揃えの彼に流すマスター。


かなりベタで、ストレートな誘い方だ。





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