奥手な二人の両片思い
菫side



「ねぇ! 菫ちゃんは上川にチョコあげるの?」



休み時間。お茶を飲んでいると、夏穂ちゃんが楽しそうに口を開いた。

どうやらバレンタインの話らしい。



「あげる予定だけど……早くない? まだ1ヶ月以上あるよ?」



今日から新学期始まったばかりだから、バレンタインのことなんて全然頭になかった。

すると夏穂ちゃんは、「チッチッチッ」と指を振りながら正面にやってきて……。



「1ヶ月なんてあっという間だよ? 今のうちから準備しとくと、バタバタしないで済むでしょ?」

「まぁ……」



去年は2月に入ってから準備し始めたけれど、思うように上手く作れず。結局市販のお菓子をプレゼントした。

そこで気づいたのが、自分にはお菓子を作る才能がないということ。



「今年は手作りじゃなくて、買おうかなって思ってる。私、お菓子作り向いてなさそうだから」

「去年失敗したの?」

「うん……何度か練習したんだけど、毎回隕石みたいなお菓子になっちゃって……」

「え……」



目を見開いて固まった夏穂ちゃん。
隕石という言葉に絶句している様子。



「材料がもったいないからもう作るのはやめるの」

「そうなんだ……」



隕石なんて言いすぎだよって思うかもしれないけど……。

毎回デコボコしたお菓子ができて、見本の写真通りにならないんだよね。
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