奥手な二人の両片思い
熱くなった顔を手で押さえる。



「にしても、文字と意味で好きを強調してくるとは……」



すると彼女は、追い打ちをかけるかのように、ニコニコしながら立ち上がり……。



「『菫ちゃん、勘弁してよぉ』って言いたくなるよねぇ」

「……っ!」



恥ずかしくなって咄嗟に後ろを向く。

ただでさえドキドキしてるのに、下の名前を出さないでよぉぉ!


唇を噛みしめていると、呆れたような溜め息が聞こえた。



「いい加減告白したら? もうすぐ友達6年目なんだよね?」

「…………」



背を向けたまま黙り込む。


おみくじと東馬から応援をもらったけど……まだ心のどこかに、「今の関係が崩れるかもしれない」と不安がある。

たとえフラレたとしても、今みたいな仲に戻れるかどうか……。



「もう……焦れったいなぁ」

「まだちょっと怖いんだよ!」



振り向いて、少しイラついた様子の彼女に言い放つと、再び溜め息が漏れた。



「本当チキンだよね。このままずーっと黙ってるつもりなの?」

「……いつか伝えるって」

「ダラダラ引き延ばしてたら、余計伝えづらくなるよ⁉」



バンと机を叩いた清花ちゃん。



「大切な友達ならなおさら……伝えないで後悔してほしくないの」



少し切ないような顔と、潤んだ瞳。
彼女の言葉が妙に胸に突き刺さった。
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