奥手な二人の両片思い
「あと、まだ誰にも話してねーんだけど……俺、その子のことが好きだったんだよね」



神妙な面持ちで打ち明けた隼。

「内緒な?」と口に指を当てて笑っている。



「誰にもって……清花ちゃんと水沢くんにも話してねーの?」

「話せるわけねーだろ。気まずくなるじゃねーか」



マジかよ……。
モテるのに彼女作らない理由ってそれだったのか。

今も忘れられないくらい好きなのかな。



「じゃあなんで俺には話してくれたわけ?」

「お前の背中を押せるかなって。俺は死なない限り、本人に直接伝えることはできない。
でも、お前は違うだろ」



いつもとは違う真剣な顔つきに、思わず背筋をピンと伸ばした。



「……怜也には、俺みたいに後悔してほしくないんだよ」



真っ直ぐな眼差し。それは、先程の彼女と同じ瞳。

そんな彼から放たれた言葉が再び胸に深く突き刺さった。



「ちょっ……泣いてんの⁉」

「っ……しゅぅぅん! ありがとぉぉ!」

「あっつい! 離れろって!」

「お前が幼なじみで本当に良かったよぉぉ!」



嬉しさのあまり、感涙。

周りに人がたくさんいるにも関わらず、目の前の彼にガバッと抱きついた。
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