奥手な二人の両片思い
教室に戻ると、夏穂ちゃんと塩野くんが楽しそうに話していた。



「今年は大丈夫だろうな?」

「大丈夫、安心して。確認しながら作ったから」



塩野くんの手には四角の赤い箱が。

夏穂ちゃんからのバレンタインチョコかな?


カップルの会話を邪魔しないよう、静かに自分の席に着き、机に突っ伏す。


早く2人が仲直りできますように……。



────
──



「綿原さ~ん、お客さんだよ~」



昼食を終え、机に突っ伏して昼寝していると、クラスメイトの呼ぶ声で目を覚ました。

お客さん……? 誰だろう。



「は~い……」



あくびをしながら席を立ち、寝ぼけた顔のままドアを開けると。



「すみません、ちょっと隠れさせてください」

「えっ⁉」



開けた途端、モルくんが半ば強引に中に入ってきて、眠気が一気に目が覚めた。

な、なんでここに⁉ いきなりどうしたの⁉

他のクラスメイト達に会釈している彼に問い詰める。



「モルくん、どうしたの? もしかして、今朝の話の続きしたかった?」

「はい」



小さな声で短く返事をしたモルくん。

詳しく話を聞こうとしたけれど、口を開く間もなく、ドアをノックする音が聞こえた。
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