奥手な二人の両片思い
「私は大丈夫。なんか逃げられてるけど、取っ捕まえて謝るから心配しないで」



フフフッ。取っ捕まえて、なんて、猟師みたい。

ドSな清花のことだから、狙った獲物はどんな手を使ってでも絶対捕まえそう。



「逃げられてるの?」

「うん。うさぎみたいに逃げ足が速くてさ……」



そうだった。
清花にとっては、うさぎくんだったっけ。



「頑張ってね! 清花ならきっと捕まえられるよ!」

「う、うん……」



応援すると、フフフと笑い声が。

そんなに面白かった? ツボに入ったのかな?



「あ、でも食べちゃダメだよ?」

「食べるわけないじゃん!」



「共食いか!」と笑いながらツッコまれた。



「その……うさぎって食べられるから……」

「そうなの⁉」

「うん。好みは分かれるけど美味しいらしいよ」

「へぇ、初めて知った」



……あ、これじゃまるで、モルくんが美味しそうって言っているような……。



「ご、誤解しないで⁉ 決してモルくんを食用の目では見てないから!」

「っ……⁉」



この後、9時までの数十分間、たっぷりと怒られたのだった。
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