奥手な二人の両片思い
バレンタインが終わり、テストの期間に。
学年末というのもあって、月曜日から金曜日までの5日間は、いつも以上に脳みそを使い倒した。
「終わったぁ……」
帰りのホームルームが始まるまで、だらーんと腕を伸ばして机に突っ伏す。
これでやっと自由だ……。
「菫ちゃん、お疲れ!」
「お疲れ~」
ウキウキしてる夏穂ちゃんに返事をすると、彼女は塩野くんの席に行ってしまった。
この後デートするんだって。
そういえば、私もこの後上川くんと用事があったんだった。
【綿原さん、急で悪いけど、学校終わったら俺のクラスに来て!】
今一度詳細を確認しようとスマホを開くと、黒瀬くんからメッセージが来ていた。
個人宛に連絡なんて珍しい。急用っぽいけど……なんだろう。
チャイムが鳴った瞬間、教室を出て階段を駆け下り、廊下で待つ彼の元へ。
「急に呼び出してごめんね。怜也と遊ぶ約束してたんでしょ?」
「大丈夫。まだ時間あるから。それより……」
「しゅーん!」
呼び出した理由を尋ねようとすると、上川くんが小走りでやってきた。
「あれ? 綿原さんも呼ばれたの?」
「う、うん……」
私だけじゃなくて上川くんも呼ばれてたんだ。
「わりーな。とりあえずちょっとついてきて。理由は後で話す」