奥手な二人の両片思い
黒瀬くんの後を追い、中庭へ。
そのまま保健室の近くまで移動し、窓の前で足を止めた。

すると、校内放送が流れてきた。



“1年5組、水沢透瑠くん。職員室に来てください”



「2人ともしゃがんで!」



黒瀬くんに言われるがまま、その場にしゃがみこんだ私達。

モルくんが呼ばれてたけど……何の関係が?



「おい、そろそろ説明してくれよ」

「わかったわかった。実はな……」



話によると、今日保健室で清花とモルくんが鉢合わせするらしい。

以前、清花が海先生に『モルくんと話がしたい』と相談していたのをこっそり聞いたんだそう。

もしかしたら告白するかもしれないと思って、私達を呼び出したという。



「お前なぁ……人の告白を盗み聞きしようなんて悪趣味にも程があるぞ」

「ただ見守るだけだって」

「そういう上川くんも、この前モルくんの相談を盗み聞きしてたよね……?」

「そっ、それは……!」

「なんだよ、お前も人のこと言えねーじゃん」



窓の外でコソコソ話す。


傍から見たら、何やってんだあの人達って怪しまれそうだけど……。

幸いにも、生徒達はテストが終わった開放感で帰路に就き始めているので、中庭には誰もいない。



「あぁ〜、くしゃみ出そう……ヘックシ!」

「ちょっ! 静かにしろよ!」

「わりぃ、今朝から鼻がムズムズして……」



鼻をすする上川くん。どうやら花粉症らしい。

今日晴れてるし、風も吹いてるからツラそう。

大丈夫かな……。
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