奥手な二人の両片思い
「いーやーだー!」

「1回だけですから!」



学校でキスしたくないんだろう、清花は全力で拒否している。



「キース! キース!」

「綿原さん……やめて……笑わせないで……」

「ごめん! つい!」



興奮したきた私は、思わず小声でキスコール。

しかし、プルプル震えている上川くんに注意されてしまった。


すると……。



「待って、透瑠く……」



キャーーーー!

モルくんが目を閉じて、清花にキスしようとしている。


綿原菫──17歳。

ついに! 生でキスシーンを見る日がやって来まし……。



「ヘーックション!」



……この声は……ま、まさか。

チラッと隣を見る。



「……ごめん。もう限界だった」

「か、上川く……」

「せっ……先輩⁉」



窓に目を向けると、モルくんが目を丸くして驚いていた。

その隣には……。



「に、逃げるぞ‼」



黒瀬くんの一声で、その場から逃走。

中庭を出て下駄箱に向かう。



「しゅぅぅぅん! ごめぇぇぇん!」

「謝るのは後でいいから今はとにかく走れ!」



黒瀬くんは上川くんの腕を引っ張りながら走っている。

清花の顔……あれは鬼の形相だった。
捕まったら命が……!

急いで靴を履き替えて、猛ダッシュで学校を後にした。
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