奥手な二人の両片思い
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「っ……みんないるか?」

「うん、いるよ……」

「ごめんなさい……」



建物の影に身を隠し、全員の生存確認。

1、2、3……みんないる。



「良かったぁー」



安心して声が漏れた。

って、全然良くない! まだ来月も学校あるんだった!



「どうしよう! 来週清花達と顔合わせらんないよ!」

「しまった……」



黒瀬くんと2人で頭を抱える。

休みを挟むとはいえ、その間に怒りが収まるかが問題だ……。



「なんだよ、俺に比べたら2人はクラス違うからマシじゃん。俺は同じクラスだからな⁉」



「花粉のバカやろぉぉ!」と絶望的な顔で叫んだ上川くん。

そういえば、席も近いんだったっけ。なんてお気の毒……。



「あっ、黒瀬くん自転車通学だよね? 自転車取りに戻らないと」

「そうだけど、今戻るのは危険だ」



震えながら首を横に振っている。

確かに。自ら戦場に行くようなものだもんね……。



「とりあえず、俺はもう少し時間置いて戻るから、2人は清花達に見つからないように帰って。遊ぶ約束してたんだろ?」

「う、うん……」

「マジごめん。隼も気をつけろよ。じゃあな」



黒瀬くんの無事を祈って、上川くんと一緒に駅へ。

無事清花達に見つからずに電車に乗ることができた。



「綿原さん、本当にごめんね」

「ううん、私こそごめんね」



盛大なくしゃみをしたことと、興奮しすぎたことをお互いに謝り合った。
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