奥手な二人の両片思い
「くしゃみは落ち着いた?」

「うん。あ~あ、せっかくキスシーン見られると思ったのになぁ~」

「上川くんも見たかったんだ?」

「うん。きっと隼も見たかったと思うよ」



どうだろう……。
黒瀬くん絶句してたからなぁ。

モルくんのこと、弟みたいに可愛がってるし。

「こんなに大人になって……」って寂しい気持ちになってたりして。



「それで、話したいことって何?」

「あぁ……真面目な話。公園で話すよ」



真面目な……? 進路の相談とかかな?


電車を降り、以前2人で話した公園に足を運んだ。



「「…………」」



ベンチに座って10分くらい経ったのだけど……上川くんは険しい顔をしたまま、いっこうに口を開かない。


もしかして、簡単に口に出せないくらい深刻な内容なの?

聞いてほしいだけならまだマシだけど、もしアドバイスを求められたら、ちゃんと答えられる自信ないよ……。



「……綿原さん」

「はっ、はいっ!」



ぐるぐる考えていると、突然上川くんが口を開いた。

しっかりしろ私!
上川くんのほうがもっと緊張してるはずなんだから!

たとえ深刻な内容でも受け止めないと!
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