奥手な二人の両片思い
公園を出て、いつものようにたわいもない話をしながら帰路に就く。



「気づいてたの⁉ どっちも⁉」

「うん。だから渡した時照れてたんだ」

「やだぁ……恥ずかしい……」



手のひらで熱くなった顔を隠す。

バレンタインのアメの文字と意味、どっちも気づいてたんだって。



「文字は気づかなかったのに、意味は知ってたんだね」

「その……他のだとお金が足りなくて。それに、性別関係なく友達のことは好きだから……」

「フフッ、綿原さんらしいね」



綿原さん、か。

ついさっき恋人同士になったばっかりだけど、下の名前で呼び合いたいなぁ……。


話に夢中になっていたら、あっという間に家に着いた。



「じゃあまたね!」

「うん。送ってくれてありがとう……怜也くん」



思いきって下の名前で呼んでみた。

今までずっと名字呼びだったから、慣れなくてむず痒い……。



「……菫ちゃん」

「はっ、はいっ!」



顔を真っ赤にして、口元を手で押さえている彼と目が合った。



「好きだよ」

「……私も!」



照れくさそうに口を開いた彼にギュッと抱きつく。

少しお調子者で人気者な彼は、私にだけ甘い顔を見せる、優しいヒーローになりました。



END
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