奥手な二人の両片思い
帰り道。
隼と清花ちゃんと別れて、駅のホームで電車を待つ。



「楽しかったね。今日撮った写真送るよ」

「ありがとう」



みんなで撮った写真を綿原さんに送信。

たくさん写真撮ったのはいいけど……せめて1枚、ツーショット撮りたかったな。

周りに人あんまりいないし、今からでも遅くないかな。



「ねぇ、一緒に撮らない? 今日お揃いコーデだし」

「うん! いいよ!」



服が同じなのを口実に写真をおねだりした。

実はツーショット初めてなんだよな。
よく一緒に下校してるわりには、制服で撮ったこともないし。



「自撮り上手いね。普段からよく撮ってるの?」

「まぁ、時々」



今日たくさん撮るかもしれないと思って、ここ2週間毎日自撮りの練習をしてきたんだ。

成果が出て良かったぜ!


だんだん人が増えてきて、後ろから押されるように電車に乗った。



「「…………」」



まだ夕方前とはいえ、GW。旅行かばんを持った人でいっぱい。

電車内はおしくらまんじゅう状態だ。


俺はなんとか手すりに掴まっているけれど、綿原さんは掴まる物がなく、目の前で必死に立っている。


すると、電車が大きく揺れた。



「……ごめん!」

「大丈夫。俺の腕に掴まって?」

「ありがとう……」



バランスを崩して寄りかかってきた彼女を支える。

ふわっと甘い香りが漂って、再び心臓が音を立てた。

っ、落ち着け俺! 平常心を保つんだ!
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